【紗夢(しゃむ)】  2001.6.17


自分で言うのもなんだが、私は紗夢という名前がとても好きである。
字も美しいし、響きも好きである。何より、字の持つ意味がいい。

今日は、なぜこんな素敵な名前を使えるようになったのかのお話。
ちいとばかし、愚痴話の披露でもある。


もともと、コンピューター(この言い方も今では少々古くさく聞こえる)には縁遠いというか、ぜんぜん興味がかった。それが、会社の人事異動という勝手な采配で、希望もしていないのに配置替え。その部署名は「メディア情報部」、パソコンが使えなかったらどうしようもないところであった。

「コンピューターのことはぜんぜんわからないのですが」と所属部長に言うと「大丈夫だよ、みんなが教えてくれるから」という、にこやかな返事。

ところが、誰も教えてくれない。何をどう触っていいかもわからないのだからしょうがない。本も無い。所属長が誰それに聞いたらいい と指示のあった人は、誰も「わからない」「それは知らない」で教えてくれない。

あとからわかったことだが みんなこの部長がキライだったのだ。

あげくは、この所属長「君はワードも知らないのか」と大きな声で怒鳴る。最初からわからないと言うとろうが(コイツのコトバによるイジメは日ごとに増幅していった)。ムカムカ。だいたい、インターネットに接続、検索もわからなかったのだから。この時43歳。

ワープロは使えたが、パソコンは起動の仕方からしてわからない。しょうがないから、ボーナスでパソコンを買う。大層な出費だ。
仕事というものは、時間中に一所懸命するのだから、家には持って帰らない というのが、私のポリシーであったのに。
かつて、家まで持って帰って、必死でやっていたら「アイツは好きでやっている」に始まり、男性社員の集団イジメを経験した。オトコのイジメは女性のそれより強烈でやり方が汚かった。それを身をもって知ったのが33歳の時であった。

オトコ社会は醜いのであった。それからずっと我慢のコ。

もちろんいい男性も中にはおらるる。と話が得意の脇道に。

年始・年末のわずかな休暇に、本とくびったけであちこといじくりまわすも、ワードと簡単なエクセル、メールとインターネットに接続、検索くらいのお始めコースがやっと。でも、ワードさえ使えたら仕事はなんとかなるし、検索も使えるようになったから、それでいい。今もそれ以上はわかっていないが、わからなくてもなんとかなっている。

パソコン購入と仕事がきっかけで、ひょんなことから、高校時代の先輩方とメール交換が始まった。このメールの会、名前を京都暇人倶楽部、略してKHCというが、メンバーは京都人ばかりではない。10人ほどの会で、各人がメンバー全員に同一メールを送信する仕組みになっている。

そんなメンバーの中にアカウント名を炬燵猫と称する先輩がいた。時には猫大王である。私は無類の猫好きであった。アレルギー喘息になってから、哀しいことに猫には近づけない。

大亮(ダイスケ)という5キロの愛猫も泣く泣く手放した(幸い貰い手は見つかったが、1カ月ほど泣いて暮らしたという実績がある。猫好きならわかってもらえよう)。

この先輩に、冗談半分に「猫大王の一族に加えて下され」とメールでお願いするや、「紗夢猫」という名を頂戴したのである。

この先輩は東の地でご住職をしておられ、戒名をおつけになるのが大変ウマイと地元では大評判だとか。紗夢猫も戒名をつけるノリでつけたのでは…と密かに思っている。


イヤな上司にいじめられなかったらパソコンを買っていなかったかもしれない。そうしたら、高校時代の先輩と再会することもなかったかもしれない。イヤな上司は大嫌いだが、禍が再会を生み、「紗夢」は誕生いたしました。