【筍(竹の子)執着物語・下】 2002.4.29

 筍料理を満喫した私たちは、「うお寿」さんで出会った楽しいご夫婦が教えてくれた柳谷観音さんに行くことに予定を変更。どうやら二人とも大層お気楽者らしい。 多分こっちだろうと あたりをつけて車を走らせたが、とんでもない方向違いをしていた。 地図を見てもわからない。

 多分こっちだろうと元に戻りながら適当に曲がる。団地の中に入りこんだ。 人に聞こうにも出会わない。 やっと出会った人に「すみません。柳谷観音さんに行くのはこの道でいいのですか?」 と聞いたら、きっぱりと「違います」と言われてしまった。
  丁寧に教えてもらい また車を走らすが「違います」ときっぱり言われたことに大笑いしていたら、 次に右か左か、曲がる方向がまたわからなくなる。 今聞いたところなのに、二人とも笑いすぎて、スコンと忘れている。

 また人に聞く。今度はバス待ちのご婦人に教えてもらった。それを横で聞いていたオジさんが口をはさむ。 「次を左にまがってその突き当たりのT字路を右に曲がる」と教えてくれた。
 私たちは、親切に教えてくださったのに、おばさんの間違いがおかしく (おばさんは最初を右に曲がると教えてくれた)、大笑いしていたら、 T字路に着いた時にどちらに曲がるのか、すでに忘れていた。今聞いたところなのに が  これで何回目だろう。
 「どっちやった」と私が聞く。Kさんは左と言う。 なんとなく不安。ちょうどそこにおられた幼稚園お迎えお母さんらしい人に聞いたら右だった。 またここで大笑い。

 ほどなく、それらしい道に出、少々の不安をもったまま走っていたが、間違いないようだった。 竹林が道路の両脇にあり、ポツンポツンと地取りの筍販売店が見えてきた。
 竹林にある筍屋さん の朝掘り筍は さも美味しそうな筍に見える。竹林というのは 何とも言えない風情がある。
 車の中から店を物色し、帰りはあそこに寄ろうなどと もう買うつもりの二人だ。 お互い本心は語らなかったが、どうやら柳谷観音さんはついでで、朝掘り竹の子の方が主目的 だったかもしれない。

 ようやく柳谷観音 楊国寺に着く。ここでも面白いことがあった。Kさんは足が少ししんどいこと もあり、駐車場がお寺さんに近いところの方がいい。最初に目に入った駐車場は「第2駐車場」 と書いてあったので「第1駐車場」を探した。ところが第1駐車場はない。 ただの「駐車場」はあったが。
 それでKさんがもっと上だろうと言うので上に行ったらお墓だった。 またここで大爆笑となる。車をUターンさせたら、楊国寺のほぼ全容が見えた。 「あそこやったんや」ということがわかり、戻る。

 この楊国寺には、眼病に効くというありがたい「独鈷水(おこうずい)」 と呼ばれる涌き水がある。老眼の進んできた私は、是非いただこうと思った。 しかし「独鈷水」の説明看板の後ろにしたたりおちる水は、独鈷水ではなかったようだ。  
 気がついたのは飲んでしまったあと。反対側に同じようにしたたり落ちる水があり、 そこには「これは独鈷水ではありませんので飲まないように」と説明書き。 両方に書いといてくれないと と嘆いても、あとのまつりで仕方なし。
  すでに飲んでしまった後だったのだ。ま、なんかあっても下痢するぐらいやろ とおおらかな私。 お寺を拝観し、本当の独鈷水を見つけ、今度は安心して口に含む。 冷たくてまろやかに甘い感じだった。

 境内では、気持ちの良い「緑風」と呼ぶにふさわしい爽やかな風と、街では耳にすることのない ようなウグイスの声。まるで耳元で鳴いているような錯覚さえ起こすような澄んだ声を堪能。
 いざ帰り道。ちゃんと帰れるかな と一抹の不安はあったが、大丈夫だった。往路は曲がる道を 1本間違えたということも発見。

 忘れずに 目当ての筍屋さんにも寄った。
 また、ここで爆笑ひと騒動。Kさんは一盛り1000円の筍を買われた。 おっちゃんはサービスに筍二本ほどオマケをしてくれた。私は一人なので一盛り500円の筍 でも量が多い。買うか、買うまいか悩んでいたら、Kさんが「今貰ったのをあげる」 と言って くれたので「それ300円で売ってくれる」と 店の前でやりとりをした。

 それを聞いていた、筍屋のおっちゃんが  「それやったらこれ(500円盛りのを)300円に負けとくわ」と言わはる。Kさん、すかさず 「あんたウマイな」(結果的に値引き交渉になった)。
 おっちゃんは筍の盛りが4本だったので「数が悪いし、もう1本おまけするわ」と言って出して くれた。私の本心は、筍のオマケはいらない、値段だけまけてくれたらいい だったのだが。

 値段をまけてくれて、まだサービスしてくれはるのは有り難いなあ と思っていたら、 おっちゃんは 500円玉を出した私に いっこうにお釣りをくれる様子がない。

 おまけの筍まで貰っておきながら、お釣りを要求するのはどうかとも思ったが、 思いきっておっちゃんに「お釣りは…」と控えめに言ったら、おっちゃんはすっかりお忘れだった ようで、ちゃんと200円のお釣りをいただくことが出来た。
 このおっちゃんに 筍の丸焼きについて尋ねたら、茹でずにそのままアルミホイルに包んで 焼けば良い ということだった。
 茹で方も、ええ筍やから、ヌカやタカの爪なしで水だけで良いという指南。 なるほど鮮度を示す筍の切り口は真っ白。

 帰りに 京都では有名な神崎屋さんにも行った。Kさんは神崎屋さんをよくご存知で、 神崎屋さんには、筍ご飯も売っているとのこと。Kさんは嫁がれた娘さんに、神崎屋さんの 加工筍を送るつもり、私は口直しに美味しい筍ご飯を買うつもりだった。
  今度も人に道を聞いた。最終目標地点には、めずらしくというか、幸いにというか、 全く間違わずに到着できた。

 けれども筍ご飯は売りきれ。店内の筍は、どれもふっくらとしており、 皮の色も違う。値段もゼロが1つ違う。神崎屋さんは、良いものしか扱わないお店だ ということだ。Kさんが発送手続きをしている間、試食品を食べた。 確かに美味しい。しかし、みな良いお値段がついている。私は試食品で満足し、 二人は少々笑い疲れ帰路に着いた。

 帰りの車中でKさんがひとこと。
「筍はええわ。松茸に比べたら安いし、何回も食べられるし」
うーーん。含蓄のある言葉や。なるほど その通りやなぁ と何故か深く感じ入る私だった。

 帰宅後、早速 一番小さい筍でアルミホイル包み焼きを実行した。結果は悲惨。
 喉から食道と思われる付近まで、口の中が筍のアクだらけ状態。口の中や、 食道にブチブチができるのではないかと思うほどの アク アク アク。
 教えてもらった通り 水だけで茹でた筍も 刺身風にして食したが、こちらもアクが残っていた。 アクも味の内とは言うが。

本日の教訓

 筍は 惜しまず 皮を剥くべし。なんぼええ筍でもヌカと鷹の爪を入れて茹でた方が安心。

 私の筍食べたい病は まだとどまらない。茹でた筍を 今度は筍カレーと、 前回の道草探検隊で食べた 炒め筍にしようと思っている。

 筍づくしは Kさんに ご馳走してもらってしまった。こちらから誘ったのに。 何とも有り難いことです。この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 東洋医学では「筍はカラダの中をキレイにすると言われている」ということを聞いた。
 私のカラダの中は現在大掃除中かもしれない。