【初詣】 2002.1.1

 夜中に三井寺さんへ初詣に行きました。私は無宗教ですが、ここ数年の初詣は三井寺さんにお参りしています。 三井寺さんの本名は園城寺(おんじょうじ)。「三井の晩鐘」で、近江八景のひとつして有名です。鐘の音は「日本の音百選」に選ばれています。

 お寺に着いたのは12時半頃だったでしょうか。昨年の不況や、世界の哀しい出来事のせいか、境内には人が溢れていました。
 いつもなら、すぐに、そんな人ごみだけで疲れてしまうのですが、境内に響く読経の声が、なぜか体内にしみこみ、清々しい気持ちになれました。
 
 国宝の金堂でお加持をしていただけるのもこの夜だけと聞いています。多くの人がお加持をしていただくために並びます。私も列に加わり並びました。そして順番がきました。その時、ただただありがたく、ありがとうございますとつぶやいていました。
  手を合わせると 心の中からは「ありがとうございます」という言葉しか出てこず、そして、胸が熱くなりました。
 
 初詣は何度も行きましたが、こんなココロの反応は初めてでした。
そんな自分のココロを感じているのも 気持ちの良いものでした。

 言葉で説明するのは、なんだかつまらなく、言い足りないと思うのですが、この時の「ありがとうございます」は神でも仏でもなく、万物に向かって心の底から溢れ放たれた言葉のように私には感じられました。

 僧侶の方々の心のこもった読経の御蔭かもしれません。


いろんなことがありました。いろんな人に支えられ、アドバイスもいただきました。「人は決してひとりで生きているのではない」とよく言われます。
 
 でも、何事も選ぶのは「私」。決めるのも「私」。間違った選択をし、間違いを犯すのも「私」、正しい選択をするのも「私」です。間違いを犯さない人間はいないと思います。そして、何が正しくて、何が間違っているのかを決める術はありません。 他人の評価に振り回されていたころもありました。
 
 他人の声に耳を貸さないというのではなく、大概の事は自分の心に聞いたらわかるのだと、そんなふうに思う最近です。自分がどうしたら気持ちよくいられるか。それが大事なことだと思います。 ひとりだけの力ではないにしろ、いろんなことを乗り越えて、今、生きている「私」がここに「ある」。そんなことへの感動もあったようにも思います。

 うわべを飾る装飾や欲を一枚ずつ脱いでいったら、例えがへんですが、タマネギやラッキョウの皮を剥いていくみたいに最後は何もなくなる。そんなことって大事かもしれない。 稀にですが、心が多分「無」に近いとき、周りの人々も含めて、自分が景色の一部になったように感じる時があります。
 ジグソーパスルがピタってはまったみたいな感じでしょうか。すべてが納まるところに納まっている。そういう時の「感じ」は、素晴らしく穏かで気持ちのいいものです。この日の私は、ちょうどそんな感じでした。

 そんなことを 感じながら 本当に心穏かに帰りの参道を辿りました。
(いつもこんなふうだといいのですが。)

良い初詣となりました。ありがとうございます。合掌。

【付録・園城寺鐘楼(しゅろう)=三井の晩鐘】

ここの鐘は108つ以上 撞いてもいいことになっています。

伝説があります。

湖に棲む蛇が、子ども達にいじめられており、湖岸に住む若い漁師助けて逃がしてやりました。数日後、美しい女が漁師を訪ね、二人は結婚しました。やがてみごもった女は決して中をのぞかない様に産屋に入りましたが、男は約束を破り、中を覗いてしまいました。その女は、漁師に助けられた蛇の化身だったのです。姿を見られた女は、黒い玉を赤ん坊に残し、去っていきました。 しばらくすると、その変わった黒い玉を殿様が欲しがり取り上げてしまいました。玉が無くなり、泣きやまなくなった赤ん坊を抱え困った男は、女が消え失せるときに言った言葉を思い出し、湖岸に立って手を三度うちました。 すると湖から片目を無くした女が現れ、「あの黒い玉はわたしの目の玉です。残りのもう片方の目も捧げます。しかし、何も見えなくなっても、かわいい子供には思いを馳せることができるよう、三井寺に鐘を寄進して、いつも夕方について下さい。」と言い、去っていってしまいました。 男は女の愛情にうたれ、早速鐘を寄進し、毎夕美しい鐘の音を湖に響かせたということです。
そして、この鐘の音で、湖に棲む蛇は子どもの成長を知るのです。だから、子どもは元気だよという知らせのための鐘なので、三井寺では毎年108つ以上の鐘が撞かれるということです。
私はこの伝説は、蛇ではなくずっと龍神さまだと勘違いしていました。

撞くのは、厄年の人や年男、年女、子ども達など多くの人々。奉納金をして鐘をつくために長蛇の列がつくられます。
昨年、病院から外出許可をもらって初詣をして鐘を撞きました。なんとも言えない良い音でした。ちなみに奉納料は500円だったように記憶しています。間違ってたらごめんなさい。