【ベランダガーデン便りVol.3】  2001.9.16

秋晴れのある日、とても、とても久しぶりに こころゆったりとベランダガーデンで時を過ごした。

水遣り作業はかかさずにしていたし、時にはヤモリさんと出会ったり(ヤモリさんはとってもかわいい)、小さな発見や出会いはあったが、ココロここにあらずというか、ココロが闇の中をさまよっているような、支えがなかったら闇に引きずり込まれてしまいそうな、そんな8月の日々を過ごしていた。

その日は、いきなりカエルさんと対面。ここはアパートの4階。どうしてここまで来られるのか謎である。カエルさんは、華奢なレモンバームにしがみつき、自らの体重で見るからに不安定な体制であった。去年も1匹出会ったのだが、親切心から1階まで運んであげようと手にとろうとした瞬間、4階から地上へ飛翔してしまった。落下事故の幇助をしてしまったので、今年は放置することにした。

他の生き物は、緑と黒の縞模様の青虫(毛虫ではないから、青虫と呼んでいいのだろう)が羊歯に2匹住みついている。我がベランダガーデンにはどういうわけか、羊歯の生えた鉢がある。ベランダで自生というのも不思議だが、勝手に生えてそのまま鉢に枯れずにいついている。最初その鉢に植えていた植物がなんだったかは思い出せない。羊歯が生き残ったのである。その羊歯の葉を青虫が食している。いずれ蛾になるのか、蝶になるのか。勝手なもので、相手が羊歯なので、青虫は退治せず成長するにまかせている。

花はコムラサキシキブが薄紫の玉をつけてくれて、目に楽しい。ミニバラは、相変わらずかわいらしい花を次から次に咲かせてくれている。本に書いてある「剪定」の仕方通り五枚葉の上で切り取っては、切り花を小さな器で楽しんでいる。
シュウメイギクの蕾があがってきた。ブライダルベールは、あまり世話をしてやらなかったが、今年は秋にも花を咲かせてくれている。白い可憐な花は、いつ見ても心が和む。
山吹色の初恋草がひっそりと咲いている。

さて、前回書いた、果てしない野望を持った「ベランダガーデン花より団子」は『野菜作り百科』という本まで買って熟読し、嬉々として始めたが、完璧なる失敗と相成った。

トマトの花は次から次へと咲いたが、実は、あれっきり1個だけしか出来なかった。でもとても美味かった。シシトウは5本もなっただろうか。でも、1本ずつの収穫では料理のしようがない。野菜炒めにほりこんで食べたけど、とてつもなく辛く、汗噴出。「辛い思い出」となった。

赤ピーマンはいつまでたっても赤くならず3個の収穫。宮崎産完熟赤ピーマンはどうして収穫しておられるのか という疑問だけが残った。オクラは3本。トウガラシだけはせっせとかわいらしい花をつけているが、実は小さい。乾燥させる気にもなれないくらい小さな実。生のトウガラシは料理に使えるのか。本には書いてない。

NHKの朝の連ドラ「ちゅらさん」でおなじみになったゴーヤーマン「ニガウリ」は小指よりも細い実がかろうじてひとつできただけで、食せるようなものではない。黄色い五弁の花びらと真中にオレンジ色の花心をつけた花は、誠に私好みの配色の美しさで「ニガウリは鑑賞花となりにけり」である。


菜園は失敗に終わったが、ハーブはみんな元気に育ち、今年は特にバジルが豊作だった。せっせと新芽を摘んでは利用していたので、今、芳香も爽やかな白い花をつけている。この花もトマトにちらすと美味しい。バジルティーも好き好きがあるだろうが私には美味しかった。胃にもいいそうである。ミント、レモンバーム、アップルミント、ローズマリーはお茶に、ローズゼラニウムはお風呂にと活躍。中でもローズマリーは、失業者にはとっておきの贅沢「子羊のロースト」(と言っても、フライパンで焼くだけだが)には最高の付け合わせだし、白インゲン豆にニンニクと一緒に入れて煮るとイタリア風になる。ローズマリーだけのお茶も私にはお気に入りの一品になった。

楽は苦の種 苦は楽の種。菜園はことごとく失敗に終わり、野望は潰え、赤字決算となったが、ハーブで多いに楽しんだ ということにしておこう。

そして、野菜作りには向いていない ということを自覚せずにはいられなかったことも正直に申告しておく。